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●「自分がやって欲しいことをお客様にしてあげて」と気軽に言ってはならない!
 


「自分がやって欲しいことをお客様にしてあげて!」

接客をアルバイトさんなどに教える際に、皆さんもよく使っている言葉ではないでしょうか?

私も18年前コンサルタントを始めた当初はこのような「教え方」をしていたのですが、実は今はこの「教え方」は絶対にしないようにしています。


それはなぜか?

とあるコンサルティングがきっかけでした。
それは、5年前ぐらいに、あるお好み焼き店の接客改善のご依頼を受けた時でした。

そのお好み焼き店の接客は、当時すべてが「受け身」の接客でした。
・注文を受けるのも、追加注文を受けるのも、すべて”お客様から呼ばれてから”対応する。
・料理やドリンクの説明もお客様から求められるまで一切やらない。
・商品のおすすめなんて、やれる人が一人もいない

こんな「受け身」の接客だからこそ、お客様の満足度がどんどん低下し、売上低下につながっていると考え、「攻め」の接客に変えることでお客様の満足度を向上させようとご支援させていただいていました。


するとある日、20代前半の社員スタッフから私に対してクレーム(?)がありました。

「今、取り組んでいる接客なんですが、僕は”いい接客”だとは全く思わないのですが・・・」

この彼の発言に当時、私はとても面を食らいました。

飲食店で働くスタッフであれば皆、こちらから積極的にお客様に呼ばれる前に行動したり、積極的に情報提供(商品やイベントのお知らせ等)をすることは「当たり前」であり、これができないと「接客が良い店」なんて言えるわけがない、と私は考えていましたし、皆そう考えているだろうと・・・。


しかし、彼はこちらからお客様に近づくことは「嫌だ」「違う」というのです。
そこで、彼によく話を聞いてみると、普段利用するお店は「タッチパネル」を使うような低価格の居酒屋などが多く、自分の「タイミング」で注文できる店の方が「いい接客」であり、スタッフがどんどん近づいてくる接客は彼にとっては「おせっかいな接客」にしか映らないというのです。


すると、冒頭のことばに戻りますが、彼のような人には「自分がして欲しいことをお客様にやってあげて」と教えてしまうと、「待つ」ことが自分のして欲しいことであり、彼をなんら責めることはできないのです。(彼は言われたとおりにやっているわけですからね・・・)


これは、個のニーズが多様化しているいうことの証であり、最近は特に「個の空間・時間」を大切にしたいという人が増えており、一概に「こちらが求めることを皆が同じように求めるとは言えない」時代になったということです。


だからこそ、この件以来私は、接客指導においては、「自分のして欲しいことをお客様にやってあげて」とは絶対に言わず、「私たちの店では、お客様にこうなってほしい、こんな風な気分になってほしい」という店の方針を伝え、この価値観を皆で共有することを接客指導においては大切にすることにしています。


もちろん、個の考え・意見を全く取り入れないというのではなく、方針を経営者が決定し、その方針を達成するための方法・手段などについて、スタッフに意見を求めてほしいと、セミナーやご支援先では話すようにしています。

接客だけでなく今は、店や会社の「あり方」を明確にすることがとても大切だと思います。

同じ価値観を持つ人が集まるからこそ、お客様に一定のサービスが提供できたり、皆で同じ方向に進みやすくなる。だからこそ、会社の「あり方」を明確にし、皆で価値観を共有することがとても大切なのです。

「あり方」として明確にすべきことは、
・会社は社会の中でどんな存在でありたいのか?
・店はお客様に何を提供したいのか?
・どんな思いを持つ集団でありたいか?
・仕事をするときに大切にしたいことは何か?
・社内の中でのルール
・会社が求める人材像
などです。特に、今後多店舗化を図りたいと考えている方は、この「あり方」を明確にし、スタッフの価値観を共有することが今まで以上に求められるでしょう。

 

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